適応される可能性のある刑罰。
高齢者虐待は、民事ではなく刑法の対象です。
刑法222条(脅迫)
刑法231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
刑法208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法252条(横領)
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
刑法235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する
刑法218条(保護責任者遺棄等)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
刑法205条(傷害致死)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
刑法199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
刑法218条(保護責任者遺棄等)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
刑法219条(遺棄等致死傷)
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
【成立】
平成 17 年 11 月 1 日に国会において「高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「高齢者虐待防止法」といいます)が議員立法で可決、成立し、平成 18 年 4 月 1 日から施行されています。
【定義】
高齢者虐待防止法では、「高齢者」とは 65 歳以上の者と定義されています(高齢者虐待防止法(以下特に法律名を明記しない限り同法を指します)第 2 条 1 項)。
また、高齢者虐待を①養護者による高齢者虐待、及び②養介護施設従事者等による高齢者虐待に分けて次のように定義しています。
①養護者による高齢者虐待:
養護者とは、「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの」とされており、高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等が該当すると考えられます。
養護者による高齢者虐待とは、養護者が養護する高齢者に対して行う次の行為とされています。
②養介護施設従事者等による高齢者虐待:
老人福祉法及び介護保険法に規定する「養介護施設」又は「養介護事業」の業務に従事する職員が行う上記1~5の行為です。
【虐待の捉え方と対応が必要な範囲】
広い意味での高齢者虐待を「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれること」と捉えた上で、市町村は、高齢者虐待防止法に規定する虐待かどうか判別しがたい事例であっても、「高齢者の権利が侵害されていたり、生命や健康、生活が損なわれるような事態が予測されるなど支援が必要な場合」には、高齢者虐待防止法の取扱いに準じて、必要な援助を行っていく必要があります。
【実態】
調査で定義した虐待の区分のうち、脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的、情緒的苦痛を与える心理的虐待が 63.6%で最も多く、次いで介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)が 52.4%、身体的虐待が 50.0%を占めていました。
また、本人の合意なしに財産や金銭を使用したり、本人の希望する金銭の使用を理由無く制限するなどの経済的虐待も 22.4%のケースでみられ、様々な形での虐待が行われていました。
虐待が最も深刻だった時点での高齢者の状態では、「生命に関わる危険な状態」が 10.9%、「心身の健康に悪影響がある状態」が 51.4%を占めていました。
【発生要因】
虐待の発生要因について影響があったと思われることとして次のような項目が上位を占めていました。
これをみると、虐待者や高齢者の性格や人格、人間関係上の問題が上位を占めていますが、高齢者に対する介護負担が虐待につながっていると考えられるケースも少なくないことがわかります。また、家族・親族との関係、経済的要因など様々な要因があげられており、これらの問題が複雑に絡み合って虐待が発生していると考えられます。
「虐待者や高齢者の性格や人格、人間関係」
「介護負担」
「家族・親族との関係」
「経済的要因」